期限の利益喪失の主張が・・・
貸金業者において特約に基づいて期限の利益の喪失を主張することが信義則に反して許されないとした事例です。
詳細を説明すると、貸金業者は、貸付にあたって期限の利益喪失特約が付いていました。そして、借主が期限の利益を喪失した後に一部弁済を受領するたび元金と遅延損害金に充当した旨を記載した領収書兼利用明細書を送付していました。
貸金業者は債務者が期限の利益を喪失していないと誤信していることを知っていたのに、その誤解を解くことなく返済の受領を受け続けていたというものです。
それにもかかわらず過払い金の返還請求を受けた時になって「期限の利益は喪失していた」と主張し、利息を受け取っていたのではなく遅延損害金を受け取っていたのだから利息制限法の利率ではなく、遅延損害金の利率で元本充当計算をするべきものと主張してきたのです。(※そのように計算すると過払い金の額は大きく減ることになります。)
これに対して、最高裁は「貸金業者の誤信を招く対応のため期限の利益を喪失していないものと信じて返済を続けてきた債務者の信頼を裏切るもの、信義則に反しているからその主張は認めない。」との判断をしました。
事件番号 | 平成21(受)138 |
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事件名 | 不当利得返還請求事件 |
裁判年月日 | 平成21年09月11日 |
法廷名 | 最高裁判所第二小法廷 |
裁判種別 | 判決 |
結果 | 棄却 |
判例集 巻・号・頁 | 集民 第231号531頁 |
原審裁判所名 | 大阪高等裁判所 |
原審事件番号 | 平成20(ネ)546 |
原審裁判年月日 | 平成20年10月30日 |
判示事項 | 貸金業者において,特約に基づき借主が期限の利益を喪失した旨主張することが,信義則に反し許されないとされた事例 |
裁判要旨 | 貸金業者が,借主に対し,元利金の支払を怠ったときは当然に期限の利益を喪失する旨の特約の下に金銭の貸付けを行い,借主が期限の利益を喪失した後に,一部弁済を受領する都度,弁済金を遅延損害金と残元本の一部に充当した旨記載した領収書兼利用明細書を送付していた場合であっても,次の(1)~(4)など判示の事情の下においては,貸金業者が,上記特約に基づき借主が期限の利益を喪失したと主張することは,信義則に反し許されない。 (1)上記貸付けに係る契約には,遅延損害金の利率を年36.5%としつつ,期限の利益喪失後も当初の約定の支払期日までに支払われた遅延損害金については,その利率を利息の利率と同じ年29.8%とする旨の特約が付されていた。 (2)貸金業者の担当者は,借主が期限の利益を喪失した約定の支払期日の前に,約定に従えば支払うべき元利金の合計額を下回る金員を支払えば足りる旨述べていた上,貸金業者は,同支払期日の翌日に借主が支払った弁済金につき,これを利息と元本に充当した旨記載した領収書兼利用明細書を送付した。 (3)その後も,貸金業者の担当者は,借主が同担当者に対して支払が約定の支払期日の翌日になる旨告げた際,1日分の金利を余計に支払うことを求め,支払期日の翌日に支払う場合の支払金額として年29.8%の割合で計算した金利と毎月返済すべきこととされていた元本との合計額を告げた。 (4)上記(1)~(3)の貸金業者の対応などにより,借主は,期限の利益を喪失していないと誤信し,貸金業者も,その誤信を知りながらこれを解くことなく,長期間,借主が経過利息と誤信して支払った金員等を受領し続けた。 |
参照法条 | 民法1条2項,民法136条 |